だれになにをつたえるの?の「だれ」はどんな人たちなのか

 おでかけシリーズ3連ちゃん。とりあえずこれでおしまいです。通常営業の無味乾燥メモ的ブログに戻ります。
 前回と前々回、反応いただいてありがとうございました(はてぶされたり星をいただいたり、と「まじですか?」とまじめにびつくり)。

 21世紀の科学技術リテラシー第3回シンポジウムというイベントに id:klarer-himmel13 さんと参加してきたのですが、「ブログで対決しよう!」とわけのわからないことを言ってしまい大変困らせてしまいました(すみません)。ええ、 id:klarer-himmel13 さんのブログを読んでいただければ分かるように自分の負けです。これ以上の参加記は書けません。参りました。

http://d.hatena.ne.jp/klarer-himmel13/20100214/1266151262

 というわけで自分は4つあった発表のうち一番面白かった発表を一つだけ取り出して触れたいと思います。

  • 「科学技術リテラシーの実態調査と社会的活動傾向別教育プログラムの開発」

 科学技術をいかにわかりやすく伝えるかという点だけに流れがちな昨今のサイエンスコミュニケーションの動きがあるが、西條氏の研究では、伝える相手である「だれ」についての調査している。ここでは、情報・対象に対する視点をリテラシーと定義し、一般市民が科学技術に対してどのようなリテラシーを持っているのか、という全国調査を行った、その結果報告である。
 特に科学技術リテラシーというと用語や概念の理解などといった「科学技術の知識量」についてだけ問われる(狭義の科学技術リテラシーと定義)ことが多いが、それ以外の科学技術に対する意識、関心なども含めた調査を行った、という。
 たとえば「飛行機が飛ぶこと」について理論的に分かっていても、やはり実際に乗ると「怖いので乗りたくない」という方もいるだろう。頭では分かっているものの、たとえば飛行機事故の話を聞いたことがあるため体が受け付けないということは往々にしてある。頭で分かっている、ということは科学技術に対する理解としてひとつの指標でしかないことがわかる。そういった部分まで含めた調査としておもしろい。なお、調査方法等の詳細は当日の発表スライドや、スライド最後の参照文献、あるいはこの記事の最後にリンクした各論文等をぜひ参照されたい。

http://www.ech.co.jp/jst_ristex_rit_sympo3/file.pdf

 結果として分かってきたことが調査対象者が「4つのタイプのリテラシークラスターに分けられること」である。これが面白かったのでちょっと長いのですが、その4つのクラスターについてスライドからそれぞれ引用したい。

  • クラスター1:全方位タイプ
    • 科学因子
      • 科学に対する興味・関心が高い
    • 社会因子
      • 社会的な興味・参加意識も高い
    • 科学重視因子
      • 社会的な側面でも科学を捉えている
    • 知識得点
      • 高い
  • クラスター2:科学好きタイプ
    • 科学因子
      • 科学に対する興味は高い
    • 社会因子
      • 社会的な興味・参加意識はやや低い
    • 科学重視因子
      • 科学の社会的価値もある程度意識
    • 知識得点
      • 高い
  • クラスター3:中庸タイプ
    • 科学因子
      • 科学は少し苦手
    • 社会因子
      • 社会に関する関心や参加意識は高い
    • 科学重視因子
      • 科学についての社会的視点もある
    • 知識得点
      • 中程度
  • クラスター4:無関係タイプ
    • 科学因子
      • 科学への関心は低い
    • 社会因子
      • 社会的関心や参加意識も低い
    • 科学重視因子
      • 科学の社会的価値についても関心が薄い
    • 知識得点
      • 低い

↓当日発表資料のスライド21-25までも参照↓
http://www.ech.co.jp/jst_ristex_rit_sympo3/file.pdf

 さらに、本調査に使った調査票は回答時間がかかりすぎるため気軽に調査できる簡易調査票を作成し、イベント参加者などに対して調査を行い、イベントにどのクラスターの参加者が参加しているのか、といった応用調査を行った。こちらの応用調査も興味深い(当日発表スライドの25枚目)。科学系イベントや学会、コミュニケータ系の集まり等に参加している参加者のクラスターがまるわかり、というもの。

 「だれ」に「なに」を「いか」に伝えるか。コミュニケーションにおいて相手のこと、すなわち「だれ」を知る、ということはたぶん始めの一歩。科学技術を伝える相手の属性、知識量や社会的関心の高さ、などを知ることのできる手法の確立として本調査は重要性は計り知れない(たぶん)。また今後も、別の分野で応用ができそうな調査だと感じました。今後の動きにもとても期待。最後に何となくの感想を。

  • 図書館員はどのクラスターに属するのだろう?
  • 本調査の「情報リテラシー」版、ぜひどなたかやっていただけないでしょうか?

 以下、ciniiでちょろっと検索してみて、スライドで参考文献で挙げられていて誰でも読める機関リポジトリ収録のものをあげます(すばらしい)。